介護業界の人手不足はイメージアップで解消できるのか

イメージアップと啓発活動によって、常態化している介護業界の人手不足を解消する取り組みが行われている。例えば、メディアを活用して介護職のやりがいや重要性を伝える広告や番組を放送することもその一つだ。他にも学校や施設を訪れて、若年層に対して介護職の魅力をアピールする講演やイベントを実施したりなど、さまざまなイメージアップと啓発活動を行っている。最近では、SNSやウェブサイトを通じて、介護職の成功事例や働く魅力を紹介するキャンペーンを行うなどの取り組みも出てきた。

また、労働条件の改善に取り組む動きもある。介護職の報酬の引き上げ、働きやすいシフト制度の導入、研修やキャリアパスの整備によってスキルアップや昇進の機会を提供などの動きはあるが、なかなか解消には至らない。人材確保のための支援策として、介護職の養成校の増設や人材育成の強化、地域と連携した就職支援や移住支援といった取り組みも見られる。介護ロボットやITシステムの導入によって業務の効率化を図り、職員の負担を軽減するといった動きもある。人手不足の地域において、遠隔医療や遠隔介護の取り組みを行う例もある。

よく聞かれるのは、外国人労働者の活用だ。外国人介護職の受け入れや、言語や文化の違いに配慮した研修・サポートの提供などを行っている。今後ますます、外国人労働者の活用は増えていきそうである。こういった取り組みにより、介護業界の人手不足解消が進むことが期待されるが、地域や社会のニーズに応じて柔軟な対策を講じる必要があるだろう。また、早期の問題解決ばかりを期待するのではなく、長期的な視点での持続的な取り組みが重要だ。

人手不足にあえぐ介護業界の現状

益財団法人介護労働安定センターの調査によると、約6割の事業所が介護スタッフが不足していると回答している。さらに、7割を超える事業所が、採用が困難であると答えた。

介護業界は、失業保険や厚生年金などの福利厚生に加え、やる気さえあればブランクがあっても安定した雇用がある恵まれた環境だ。さらに、人手不足で有効求人倍率も非常に高く、キャリアを離れた人でも再び就職できる貴重な職業のはずだ。それでもあえて介護の仕事を選ばないのはどのような理由があるのだろうか。

介護職を選ばない理由として、約6割近い人が賃金が安いことを挙げている。どんなにやりがいがある仕事でも、給与が低ければ生計を立てていくことができないのだ。2000年に介護保険制度がスタートし、2012年までの間に介護職員の数は約3倍も増えている。上述した給与面で定着率が低いことから、2012年に介護職員の給与に加算するよう処遇改善加算が考案され、介護職員の給与は月に平均で約1万5000円アップしたことになる。

ただ、労働条件の不満のアンケートで、賃金の低さの次に身体的・精神的に仕事がきついことを挙げた人が約5割いる。少しばかり給与が上がったとしても、人手不足による職場環境の中でストレスを抱えている人が多く、そのような状況でサービス残業や休みが取りにくいなどの条件が加わると、仕事を辞めるという選択肢が浮かんでくることがうかがえる。2025年の超高齢化社会がまじかに迫っており、賃金を上げるだけではなく、職場環境を根本的に改善していくことが必要だ。